失った歯の代替治療の選択肢

患者さまが歯を失ったとき、そこを埋める治療として、インプラント・入れ歯・ブリッジの3つの選択肢をご提案しますが、その際、一つひとつのケースについてメリット・デメリットをよく説明して、患者さまと相談して決定します。インプラントはおすすめの治療法ですが、価格の点で実施にまで至らないことも多く、その点、入れ歯やブリッジを手軽な選択肢として選ばれる患者さまは少なくありません。
歯を失った状態でいるリスク
歯は勝手に動く?
重症化した虫歯、歯周病、怪我が原因で歯を失ってしまった場合、できるだけ早く、その場所に歯を補う必要があります。なぜなら、歯は決まったスペースにきちんと並んだ状態で生えているので問題なくおさまっていますが、1カ所でも歯が抜けたことで空きスペースができると、その方向に傾いたり、倒れたり、動いてしまうからです。自由に動ける歯だからこそ、歯の矯正治療というものが成り立っているわけです。
歯が動くことで起きる悪循環
歯が抜けたことで歯並びが悪くなると、老け顔になるなど、人相が変化します。さらに歯に隙間ができることで、発音しづらくなったり、噛み合わせが悪くなります。噛み合わせが悪いと、噛むたびに顎がずれるので、顎関節症になる可能性も。噛み合わせが悪ければ、十分な咀嚼ができず、消化不良になります。
さらに噛む力が衰えると、脳に刺激が行かなくなり、認知症を発祥する可能性が高まります。このように、たった1本の歯を失っただけで、次から次へと悪いことが起きてくるのです。歯がなくなってしまったら、できるだけ早く歯を補うようにしましょう。
当クリニックのブリッジ

1本の歯を失っても、その両脇の歯が残っていたら、両脇の歯を削ってかけるのが基本的なブリッジですが、健康な歯を削りたくないという理由から、そのタイプのブリッジはあまりおすすめしていません。
むしろ、重度の歯周病治療の後処置として、インプラントを入れた隣の歯がグラついていたら、そこをブリッジでつなげてグラつきを押さえる治療を行ったり、そのままにしておくと抜けてしまいそうな歯をブリッジでつなげて延命処置したり、ケースに応じてさまざまな方法があります。
その目的は“歯をなるべく残す”という点にあり、ブリッジを含め、インプラントの混合治療の場合にどう設計するかが歯科医の腕の見せどころとなります。
歯を補う定番の治療法「ブリッジ」
1本の歯を補うだけなら「ブリッジ」

両隣の歯を橋渡しにして失った歯の代わりに人工の歯を装着させる「ブリッジ」。治療の時間が短く、保険が適用になる歯の材料を選べば費用も抑えられるため、多くの患者さまが選ぶ治療法です。
ブリッジにする場合、失った歯の両隣の歯をブリッジの支えにするために削る必要が出てきます。その両隣の歯が何の問題もない健康な歯の場合、削ることや支えにすることで負担がかかるリスクを考えると、ブリッジにすべきかどうかを迷われる方も多いはずです。ところが、ブリッジにする場所が奥歯で、支えとなる両隣の歯がすでに虫歯治療をして被せ物をしている歯だとすれば、多少問題がある歯ゆえ、ブリッジの支えになってもよいという判断もできます。
メリット
- 入れ歯のように外さないので、装着の違和感はほとんどない
- ほぼ自分の歯のように食事、歯磨きができる
- インプラントのような手術の必要がない
- 治療期間が短くて済む
- 選ぶ歯の材料によっては費用も手頃
デメリット
- ブリッジの土台を果たす両隣の歯を削らないといけない
- 土台となる両隣の歯に負担がかかり、時間の経過とともにダメになりやすい
- 土台の歯が虫歯や歯周病になるとブリッジ全体をやり直さないといけない
保険適用or適用外のブリッジ
ブリッジにする場所が前歯の場合、目立つ場所のため、歯の丈夫さに加えて見た目も重視しなくてはなりません。費用を重視して保険適用の治療をするか、見た目を優先して保険適用外の自由診療でブリッジをするか、選ぶことになります。
保険適用のブリッジ
土台は金属でプラスチックを貼り付けたレジン前装冠
*見た目は白く、きちんと噛めて、費用も安いが、時間が経つと変色する
保険適用外/自由診療のブリッジ
適合良く強度がしっかりとしたジルコニア、セラミックを使用したブリッジ。
*きちんと噛めて、ほかの歯と合わせた自然な色の美しい歯は時間が経っても変色しないが、費用が高い
当クリニックの入れ歯

当クリニックでは、入れ歯の症例はインプラントに比べて少なく、歯を失った代替治療としては、どちらかというと頻度が低い治療です。とはいえ、インプラントができない患者さま、たとえば骨粗鬆症にかかっているなどのケースでは、入れ歯をベストな選択肢として採用することがあります。
また、インプラントでも最終的に手術に入る前に、一度入れ歯を装着して噛み合わせをチェックする、さらにインプラントと入れ歯を組み合わせた治療を行うなど、入れ歯も柔軟に活用しています。
院長の治療計画に応じて、ベテランの歯科技工士がつくる入れ歯は使い勝手のよいものですが、最近では、患者さまは口を開けたときに見えづらい素材や形のものを選択されることが多いようです。
取り外せるのは「入れ歯」だけ
お手入れがラクで見た目のよい入れ歯も
歯を失ったときの治療には「ブリッジ」「インプラント」「入れ歯(義歯)」の3つの選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。最も大きな違いは、ブリッジとインプラントは固定式で外せませんが、入れ歯は取り外せることです。隙間に挟まった食べ物を取り除いたり、表面に付着した汚れを落としたりできるのも「取り外せる」からです。
若い患者さまは「入れ歯」への抵抗感があるでしょうが、最近は入れ歯だとわかりにくい美しい仕上がりの入れ歯も多くなっています。また、入れ歯には残っている歯にかけて使う「部分入れ歯」と、まったく歯がない方が使う「総入れ歯」があります。同じ入れ歯でも印象はかなり異なります。保険適用の入れ歯と適用外の入れ歯ではつくりが異なりますので、それぞれの違いを踏まえた上で、検討してみましょう。
◎保険適用の入れ歯

保険適用の入れ歯は土台(義歯床)の部分にレジン(プラスチック)を使用。入れ歯初体験の人はまず保険適用の入れ歯で装着感を試してみるとよい。
メリット
- 費用が安く、土台の厚みを調整しやすい
デメリット
- 土台がプラスチックなので、食べ物の熱さ・冷たさがわかりづらく、美味しいと感じるかどうかにも影響する
- レジンだけでつくった入れ歯は厚みが出やすく、入れ歯を装着しているときの違和感がでやすい。人によっては話しづらい
- プラスチックなので、割れたり、欠けたりしやすい
◎保険適用外の入れ歯

保険適用外の入れ歯は土台(義歯床)の部分にレジン(プラスチック)と金属を使用。
メリット
- 土台に金属が使われているので、食べ物の熱さ・冷たさがわかりやすい
- 強度のある金属を使用するので、薄くても丈夫で軽い入れ歯ができる
- 土台が薄く軽い分、装着時の違和感があまりない
デメリット
- 金属部分の修正が難しい
- 費用が高い
最近話題の保険適用外の入れ歯
入れ歯の欠点ともいわれる装着時のガタツキや違和感を解消する方法として最近注目されているのが、インプラントオーバーデンチャーであります。
失った歯が多い場合、すべてインプラントにすると費用が高額になってしまいます。入れ歯の沈み込みを抑え、カタツキも抑えられますので快適です。数本のインプラントの利用で入れ歯の不具合はかなり軽減されます。