当クリニックの歯周組織再生治療
失った組織について幹細胞などを利用して補うのが再生治療で、歯科の場合、骨や歯茎に適用されます。
たとえば、歯周病で減少あるいは損失された骨や、インプラントの土台となる骨をつくって再生します。骨造成には、自分の骨を利用する場合と、人工的な素材を利用する場合がありますが、いずれにしても数カ月後にはインプラント手術などにも耐えうる骨が造成されます。
また、下がってしまった歯茎(実際には、骨も下がっている)に別の組織(主に、上顎から)を移植して再生するなど、口腔内を健康な状態に戻す一つの手段として行われるのが再生治療です。
再生治療では、噛み合わせや歯周病治療の状況など、治療要件が厳しいので、患者さまが希望されても、実際には院長の診断次第となります。
歯周組織再生治療とは?
歯周病治療の最終手段
近年医療業界で注目を集めているのが、機能を失った生体組織を再生させる再生医療です。歯周病が悪化して溶けてしまった歯の骨(歯槽骨)や歯根膜は自然に再生されることはありませんが、歯周組織再生療法を行うことで限りなく再生が可能になっています。
歯の骨や歯根膜が再生されれば歯を失わずに済みますので、重度の歯周病でも歯を残せる可能性が高くなります。また、歯槽骨は歯を支える顎の骨で、これがないとインプラント治療を行うことができません。インプラントを検討されている患者さまが歯周病の場合、この歯周組織再生治療が必要になります。
当クリニックでは「エムドゲイン法」「GTR法」「GEM21S」による歯周組織再生療法を行っていますが、すべて保険適用外になります。
エムドゲイン法
エムドゲイン法は、幼い豚の歯胚から抽出精製したジェル状の歯科材料(たんぱく質の一種)で、歯槽骨がなくなってしまった部分に詰め、組織を活性化させることで骨を再生させる治療法です。溶けた骨の範囲が狭い場合に、この治療法を選びます。このエムドゲイン法は世界の多くの国で使用されています。
治療の流れ
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1局部麻酔をして、治療する歯の歯肉を切開し、剥離
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2歯肉の内側に付着した歯石や感染物質を除去し、清掃
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3骨がなくなった場所にエムドゲインを塗布し、切開した歯肉を縫合
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4手術2~3週間後に抜糸
手術時間は約1時間。術後1カ月~1カ月半は感染対策として消毒薬で口腔内の洗浄、週に1~3回の定期的な通院が必要です。患者さまの歯の状態により異なりますが、この手術による歯周組織の再生には1年くらいかかります。
GTR法
元来、骨には再生能力が備わっています。しかし、骨が再生される場所を骨より再生するスピードの早い歯肉が覆ってしまうため、骨が再生されることはありません。そこで、メンブレンという特殊な人工膜を挿入することで、骨の再生を歯肉に邪魔されないようにするのがGTR法です。
基本的な治療の流れはエムドゲイン法と同じで、溶けた骨の範囲が広い場合にこの治療法を選びます。ただし、GTR法はエムドゲイン法よりも手術が難しく、人工膜が露出して歯周病感染のリスクがあることがデメリットといわれています。このGTR法は、外科手術で深い歯周ポケットの内側にある歯垢や歯石を除去し、下がってしまった歯茎を元の位置に戻すためにも用いられます。
GEM21 S法
エムドゲイン同様、歯周病で骨が溶けてしまった場所に詰めておけば、骨が再生される新薬です。ただし、生物材料からつくられたエムドゲインと異なり、GEM21Sは化学合成されたものです。ジェル状のエムドゲインが詰めたときに流れ出すリスクがあるのに対して、GEM21Sはきちんと詰めることができる点がメリットといわれています。
重度歯周病の治療
歯周病の進行により、重度と診断され「抜歯」と言われた歯も残せる可能性があります。
抜歯の判断基準はとても難しいです。もちろん無理やり残すせいで、その他の歯がダメになる場合は抜歯も仕方ありませんが、当院では残す努力を徹底して行います。
再生療法はもちろんのこと、歯周外科処置(ヘミセクション、トンネリング)などあらゆる可能性を探し、精密な被せ物の設計などにより抜歯しなくていい可能性は確実に上がります。
また、どうしても抜歯にいたってしまった場合、重度歯周病患者はその後のインプラント治療は難しいと言われてしまうことが多いですが、当院では歯周病の徹底的な治療と骨の再生療法によりほとんどの症例でインプラント治療を可能にいたします。
歯周組織再生治療の注意点
歯周組織再生治療はだれでも適応、必ず成功するものではありません。その治療を成功させるためには条件があります。その条件を満たさない場合は、当クリニックは治療をいたしません。
- 歯根が最低でも1/4残っていること。骨がまったくない状態では治療ができません。
- 再生治療の手術までに歯周病の治療が終っていること。歯周病菌が口腔内に残っていると、手術の効果が得られません。
- 癌の既往歴がないこと。組織を再生する治療は、同時に癌細胞を活性化させてしまう可能性があるので、癌を患ったことがある患者さまには治療できません。
静脈内鎮静法(点滴麻酔)について
当院では、自費となりますが、提携している麻酔科の先生をお呼びし麻酔を行います。
静脈内鎮静法(点滴麻酔)は、鎮静薬を静脈に点滴し半分眠っているような状態を作ることで感覚を鈍らせ、痛みへの不安や恐怖心を和らげる効果があります。
全身麻酔のように完全に意識がなくなる訳ではないので、呼びかけに応じらながら歯科治療を受けていただくことができます。
当院では日本歯科麻酔学会の静脈内鎮静法ガイドラインに沿った麻酔および処置を行っております。